【連載 Ⅰ 】”企画”するということ#006

【連載】「企画する」ということ #006

「企てる醍醐味」Vol.3

 〜「自分ごと化」のために「伝え方」に工夫を凝らす

 

三行で言うと?

 ① 「自分ごと化」がキホンのキ
 ②「伝え方」を徹底的に工夫する
 ③ 行動に誘うアプローチは多様化

 


 

皆さん、おはようございます。プランニングディレクターのK一郎です!

いよいよ連載「企画」も3回目を迎えました。

初回に、“企画は楽しい”と言っておきながら、

「思うように人が動いてくれない」とか、
「正しい情報伝達が理想行動に誘うなんて思い込みである」とか

“難しさ”の方を先んじて説明してきました。。。

 

今回からは、難しさをご理解いただいたうえで、人を動かすポイントについてお話します。

「企画の楽しさ」を味わっていただけたら幸いです。

 


「自分ごと化」がキホンのキ

「IT化の進展により脳が処理できる能力の何百倍もの情報が溢れている」と言われます。

確かに、スマホの普及によって、
その情報の多さにちょっとうんざりしている人も多いのではないでしょうか。

 

さて、小見出しに「自分ごと化」と書きました。

 

この「自分ごと化」という言葉。
“情報”を伝えたい・伝えた相手に「その情報が今の自分に関係する情報と理解させること」
を意味しています。

企画を専門とする私たちにとって、この「自分ごと化」を促すことは
とても重要な活動であるわけです。

 

ですが、先ほどお話した通り、「溢れるほど情報氾濫」が起こっている現代においてに、
“自分ごと化させる”という活動はとても難しくなっている、というのが正直なところです。

 

加えて、健康問題や社会課題解決といった“社会性が高いテーマ”になればなるほど、
患者さんや生活者といった【受け手】の人々は、「聞く耳、見る目を閉ざしてしまいがち
になってしまうのではないでしょうか。

例えば
「エコドライブしよう」
「選挙に行こう」。

こういったストレートなキャンペーンは、
なかなか【伝え手】の “期待する成果”につながりにくいものです。

 

それは何故なのでしょうか。

多くの場合【受け手】にとって、こうしたストレートなキャンペーンは
説得」に聞こえてしまっていることが多い印象を受けます。

この「説得」という行為。
相手に聞く準備がなければ「説教」に聞こえます。
正論であるがゆえ「わかってるよ!」と反発につながりがちです。

そうなってしまうと、そのメッセージを【理解】したとしても、【行動】が伴いません。。。

 


だから「伝え方」を徹底的に工夫する

仕事でテレビCMをつくっていると言うと、

「いいな~、遊んでいて仕事になるなんて」とか
「あれだったら俺でも考えられるよ」とよく言われます。

ターゲットのインサイトを把握し(※詳しくは「インサイト」をご参照)、
どのような伝え方(表現)をすると伝わるかを強烈なプレッシャーのもと、
キリキリと胃を痛めながら一日中、一年中考えています。

先ほどの、説教にならないようにしながら、
ちゃんと【理解】してもらって、【行動】をとってもらえるCMを作る作業は、
残念ながら「遊びながら」できるほど簡単なものではない、どころか
「“伝え方”を考えるとても難しい仕事」なんですよwww

 

では!
その“伝え方の工夫コンテスト”の最高峰ともいえる、広告クリエイティブのアワード
カンヌライオンズ(旧国際広告祭)」で表彰された事例をいくつかご紹介します。
Youtubeで検索いただければ、紹介動画が視聴可能ですので、ぜひご覧ください。

 


 

『Dumb Ways to Die』(邦訳「マヌケな死に方」)

 

2015年当時、史上もっとも成功したオーストラリアの動画キャンペーンです。

解決したいテーマは「電車事故の低減」。

事故防止というシリアスなメッセージを、
アニメーションと軽快なテンポの歌を使って配信したことにより、
キャンペーンは口コミで広がり、YouTubeでの視聴回数、Facebookでのシェア、
リツイート回数は過去の事例を圧倒的に上回りました。

これまでも、多くのキャンペーンが、危機感に強く訴えかける「恐怖訴求」という定番の手法で行われていました。

ですが、「説教くさい」とか「なんか見たことあるよね」
といった印象を与えていたのか、スルーされてしまっていました。

そこで方針を転換し、「事故の恐怖」を伝えるのではなく

「電車事故で死ぬってこんなに間抜けなんだよ、死んでから笑いものになりたくないよね!?」

というインサイトを突くアイデアが採用されたわけです。

その結果、メルボルン地下鉄内での電車事故発生率を当初の目標(10%削減)を上回り、

21%も削減することに成功しました。

 

 


 

『The salt you can see』

 

 

次は、塩分摂取の抑制に成功した事例です。

【料理人】が、調理の段階で塩を十分に使っているにも関わらず、
【生活者】が、さらに塩を振っていることに着目した医療財団の取組みです。

当時アルゼンチンでは、WHOの塩分摂取上限目安を大幅に上回る量を摂取していました。

解決のアイデアはとても単純で、卓上塩に色をつけること。
それにより、自分がどれだけ塩分をとっているかをひと目で分かるようにしたのです。

確かに、白い食塩はどれ位使ったのか自分でもよく分からないもの。
「見えないから使ってしまう」なら、「よく見えるようにする」という
シンプルかつ明快な発想から生まれました。

この企画には、国民的スターであり世界一のサッカープレイヤーメッシ選手が
コメントを寄せるなど大きな注目を集めました。

「食塩=白」という常識を打ち破り、人々の健康に対する意識を高めたユニークな啓発事例でした。

 

 


『Lucky iron fish』

 

 

いよいよ最後は、

カンボジアでは鉄分の不足により、人口の約半数が貧血症といわれています。

貧血は多くの健康被害をもたらしますが、とりわけ妊産婦への影響は深刻で、
早産、流産、死産の原因にも挙げられています。

鉄分を摂取するには、鉄の塊を鍋に入れて調理することが効果的とされています。

そこで、「鉄の塊」を配布し、調理の際に鍋に入れることで鉄分を補える旨を説明して使用を促しましたが失敗に終わりました。

そこで「どうしたら鍋に投入してもらえるか?」が課題になりました。

解決策を講じるにつけ、「魚」がカンボジア人の希望と幸運のシンボルであることを知り、
配布する鉄の塊を「魚の形」にしたところ、生活者に受け入れられ、
多くの家庭で鍋に入れて調理してもらうことができました。

 

効果は絶大!!!!!!

 

わずか8か月で貧血の発症件数が半減し、54,800人を救うことに成功したのです。

故スティーブ・ジョブズ氏はこう言います。

デザインとは
単にどのように見えるか、どのように感じるかということではない。
どう機能するかだ。

このカンボジアの「鉄の魚」。
まさにそれを体現するプロダクトデザインと言えるでしょう。

 

ほんの小さな違いが、多くの人々を救った問題解決事例でしたが、伝えるメッセージ(表現)の違いだけでなく、プロダクトにまで工夫を凝らし、ここまでやってようやく人は理想の行動してくれるのだと感じていただけたと思います。

 


行動に誘うアプローチは多様化

3つ、興味深い事例を紹介させていただきました。

ご紹介した成功事例は、
コミュニケーション業界の伝統的行動モデル「A→I→D→M→A」に則り、それぞれのプロセスで創意工夫をし、
各プロセスの繋がりを強固にして、最後のActionまで導くというものです。

※AIDMAの法則
  Attention(注意)
  Interest(関心)
  Desire(欲求)
  Memory(記憶)
  Action(行動)

AIDMAモデルは、コミュニケーション業界では伝統的かつ確立されたアプローチ方法。

他の業界でも十分に機能するアプローチです。

但し、先に述べた通り、情報は加速的に氾濫の度を増していますから、
このアプローチの中での各プロセスでの“歩留まり”を高める難しさも非常に高まっています。

 

 

やはり近年、
情報過多によりこのファネルにおける各プロセスの歩留まりは落ちる傾向にあります。

何年も前から
『CM好感度1位なのに商品が売れない理由』
といった書籍が棚に鎮座しているわけです。

そこで、行動に誘う新しいアプローチ方法が注目を集めるようになりました。

 

次回は、いよいよ「企画」の最終回ですが、そこでこの新しいアプローチ方法について説明します。

逆転の発想とも言えるものですが、まさに、先ほど登場した行動モデルのファネルをひっくり返すようなアプロ―チです。

 

ご期待ください!

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