恋愛に見る「コミュニケーションデザイン」

若かりし頃の恋愛

もしあなたに「気になるお相手」がいるとしましょう。
あなたはそのお相手と恋人同士になることを期待しています。さぁ、あなたはどうしますか?

すぐに「好きです。付き合ってください!!」というツワモノもいらっしゃるかもしれません。
でも僕のような小心者は、その相手がどんな人なのかを調べることから始めます。

僕は男で、恋愛対象は女性の、平凡な人間です。
まずは彼女がどんな人なのか。どんなことが好きのか。どこに住んでいるのか。はたまた何歳なのか。
どこ出身なのか。そして彼氏がいたりしないのか。頑張って【情報収集】に明け暮れます。

なんとなく調べられる限りで彼女の情報が得られました。さあ次はどうしましょう。

つぎは彼女に僕自身の存在を知ってもらい、僕という男に対する【関心】を持ってもらわなければ
なにも始まりません。

毎日挨拶をしてみたり、用もないのに彼女の視線の中に入るように遠回りをしてみたり。
ようやくどうにか僕の存在を知ってくれて、挨拶をすれば、挨拶を返してくれるようになりました。

さあ、ここからが大変です。

「お昼ご飯食べに行きませんか?」そんなことを言える度胸があればなんら苦労はありません。
そんなことをできるほどの男気(昭和的?)がない僕ですが、
一歩でも前に前進するためには「僕がどんな男なのか」をすこしずつでも【理解】してもらう必要があるわけです。
ちょっと休憩時間を取っている彼女に近づいて話をするチャンスを窺ってみたり、共通の友人にそれとなく僕の話をしてもらったり、
あの手この手のセコい手も使いながら、彼女に僕がどんな男なのかについての“情報”をインプットしていきます。
ちょっとずつ接点が多くなり共通の話題も見つけられるようになってきました。

僕についてちょっとした印象を持ってもらえるようになり、若干の【理解】が得られるようになってきた気がします。

さぁここからが勝負です。食事に誘いたい。最初はランチから。
彼女がお腹がすきそうな時間を見計らった僕は、
ふらっと近づいて「最近気になるお店があるんだけど、よかったら一緒にどうですか・・・」
とお誘いをしてみるわけです。

『ごめんなさい。他の人と約束してて』とお断りされるわけで、なかなか僕と一緒に食事に行くという【行動】までのハードルはとても高いわけで。。
「いつだったら行ける?」なんていう発言は(しつこいメンドくさい男よね)と思われそうで出来ない僕は、
手を替え品を替え、
彼女が【行動】をとってくれるような仕掛けや話術を磨き続けます。

ある日彼女が僕の誘いを受けてランチに一緒に行ってくれることになりました。
僕は立て続けに「嘘にならない程度」に自分の魅力を語り、彼女の魅力を聞き出しながら、
独り善がりの時間に終始するわけです。そこからたゆまぬ努力の日々が続いて行きます。

夜に飲みにいく、僕に対して質問をしてもらう、興味や夢について語ってもらう。
そうした更なる【行動】を彼女にしてもらうための活動に勤しむわけです。
彼女との距離は少しずつ縮まり、ふたりで食事に行く機会も増えてきました。

さぁいよいよ正念場です。
僕は告白というチャンスを作り出し、
僕の告白を彼女に受け入れてもらうという最終的な【成果】を導き出すための作戦に苦心します。
ちょっとオシャレなお店に連れて行こうか。安い居酒屋から薄暗いバーにいくという展開にしようか。
公園でさらっと伝えようか。
はたまた携帯メッセージで告白してしまおうか。。

「失敗したらどうしよう。。。もう彼女とお話しすることすらできなくなるかもしれない。」
そんな不安にさいなまれながら、僕は告白を決心しました。

 

コミュニケーションをデザインするということ

このストーリーの結末は辛い思い出になるので、勘弁してください。。
これでコミュニケーションをデザインするということの入り口はおわかりいただけたでしょうか。

【関心】×【理解】×【行動】=【成果】

お付き合いするという【成果】を獲得するために、
僕への【関心】を持ってもらい、僕という男の魅力を【理解】してもらい、
僕と同じ時間を共にするという【行動】をとってもらう。

この一連の流れをつつがなく成就していくために、
自らの価値や思いを伝えること、つまり「コミュニケーション」を設計し
実行していくことがコミュニケーションをデザインするということになります。

ほぼ初対面の状態で、「一目惚れしました!付き合ってください!!」と伝えてもなかなか確度は上がらない。
最後の告白のタイミングにしたって、デートの待ち合わせ場所で、会ってすぐに告白するより
お互いの気持ちが盛り上がる流れをつくっていって、いいムードの中で告白した方が確度は少なからず上がる。

彼女の【関心】【理解】【行動】を伝え手自身の理想的なカタチに誘うために、
「どのような情報」を「いつ」「どこで」「どのように」伝えていくのかというのを
頭を振り絞って考える必要があるわけです。
これこそが【成果】を実現するためのコミュニケーションデザインに他なりません。

 

ターゲットを期待する成果に誘うためにの“仕掛け”を考える

コミュニケーションを仕事にする人間は、
【成果】を出すために必要な【関心】【理解】【行動】を促すための仕掛け作りに日々頭をつかっています。
無関心な人々に、わたしたちがお届けしたい商品に対して「面白いかも!」という関心を持ってもらうこと、
その価値をまったく意識していない人々に、「これって私向きかも」という価値を理解してもらうこと、
すでに他の商品を利用している人々に、私たちの商品を「手にとる」という行動をとってもらうこと、
最後にその商品を「レジに持って行ってもらう」という成果を出すこと。
これはとても難しいことです。
言うまでもありませんが、性・年齢・居住地などの属性によって効果的なコミュニケーションも変わります。
【20代・都市部在住・女性】へのコミュニケーションと、【50代・地方在住・男性】へのそれとは
言うべき場所も、ストーリーも、異なってしかるべきですよね。
コミュニケーションデザインというアプローチは、ターゲットの「ココロを動かす」という作業に他なりません。
期待する成果にターゲットを誘うために、関心と理解と行動に変化をもたらす。
これはとても難しいことですが、とても楽しい作業です。
コミュニケーションをデザインするということは、
心を動かすための方法をデザインすることであり、とても魅力的な活動です。
単に情報を伝達するだけの作業であれば、ひとのココロはなかなか動きません。
みなさんが日々の生活で試みているチャレンジに、いまの皆さんの健康に関わる活動に、
こうしたコミュニケーションアプローチのエッセンスをうまくインストールすることができれば、
いまの活動の成果は劇的に変わっていくかもしれません。

 

「喫煙者を禁煙に誘うために、どうしたらそのリスクを理解してもらい、行動を取ってもらうのか。」
「多忙な働き世代の人たちを、健康診断に確実にいってもらうためには、どのような仕掛けが必要なのか。」
「チーム医療の重要性を頭では理解しながら、なかなか実施できない実務家を、動かす方法とは何か。」
こうした課題は、コミュニケーションのデザインの仕方で、大きく成果が変わってくると思います。
いまみなさんが取り組まれている活動は、本当にコミュニケーションになっていますか?
単なるインフォメーションの伝達に終わっていませんか?

これを問い直すことがコミュニケーションデザインの入り口だと思います。

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