日本発信の医学論文を増やしたい! 〜翻訳者の英文ライティングのツボ〜 はじめまして!小
普段の暮らしの中で「健康」というコトバを無意識に使っているわけですが、
この「健康」というコトバの意味としっかりと向き合うことはあまりないのではないでしょうか?
健康の定義について、WHO憲章では、その前文の中で「健康」について、
次のように定義されています。
「Health is a state of complete physical, mental and social well-being
and not merely the absence of disease or infirmity. 」
「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、
そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること。」
(引用:https://www.japan-who.or.jp/commodity/kenko.html)
ピンとくるといえば、ピンと来ますが、筆者の私にとってはもう少し「動き」のある定義が良いなあ、と感じていましたが、せっかくなのでいろんな立場の人に、聞いてみたいと思いました。
医療従事者、企業勤務、研究者、アスリート、NPO、メディア、一般生活者、元患者などなど、本当にいろんな人に回答していただきました!ご協力ありがとうございます!!
【問い】
あなたの考える「健康」というコトバの定義を、教えてくれませんか?
(回答いただいた皆さんには、前提として上記のWHOの定義を共有しています。)
私たち健康実務家は「健康をデザイン」しているわけですが、その健康の定義を共有しないで「デザインする」というのはちょっと難しいと思ってこの問いを設定してみたわけです。
結論というより、感想を先に申し上げると、
「立場によって、あるいは、経て来た体験・経験・人生によって、この健康の定義は大きく異なる」ということが、よくわかりました。全く一緒になる、という前提の方があり得ないかもしれません。
ポイントとして、健康を提供する立場にある【実務家(提供者)】の間でも、この「健康」の定義は大きく異なりました。ましてや、健康サービスの受け手である【生活者】側の「健康」の定義が、【提供者】側の定義と全く同じであることは、ほとんどあり得ないのではないでしょうか。
まずはこの「健康に対する定義・考え方・価値観」が人によって大きく異なる、という事実を私たち健康デザイナーはしっかり認識する必要があると思います。
この「健康」に対する定義や考え方、価値観が「異なる」ということを理解することが、健康実務を進めることの第一歩になることは言うまでもありません。人によって回答に違いがある、つまりは価値観の「多様性」を受け入れることがとても重要であり、画一的な【提供者側】の押し付けになってはいけないと強く感じたわけです。
ちなみに、回答者の一人である 市川さん(医療の翻訳家)から、興味深い記事を紹介していただきました。これはBMJという世界的にとても有名な学会誌で取り上げられた「What is Health?」という2011年の寄稿です。英語ですが、興味をお持ちの方はご一読いただければと思います。
(https://www.bmj.com/content/343/bmj.d4817)
唯一無二の答えはないと思いますが、実務家の皆さんを中心に得られた「定義」を下記に列挙してみました。順不同です。
【皆さんの回答】(※カッコ内「肩書き」は、回答者による)
- ポジティブに自分の”生きる”に向き合えていれば「健康」。向き合えていなければ「不健康」(人類学者)
- ココロとカラダのそれぞれが、ある程度自分の思い通りにコントロールできていれば「健康」。(アスリート)
- 健康な人なんて、多分いない。「身体・精神・社会環境がいい感じだったらいいなぁ」という風に自分自身が描く理想像のことを「健康」と呼び、それを目指すことに意味がある。(NPO職員)
- 「幸せ」の別名。原則として、自分では100%はコントロールすることができない不条理なもの。でも情報や行動をうまく使えば、ちょっとずつでもよくできるもの。(記者)
- 健康とは「食」や「睡眠」など生理的欲求が満たされていてできる範囲のことを自由にできる状態。味がわかる、食べたいものが食べられる、寝たい時に寝て、起きていたい時に起きていられる。そして「未来に希望がある」暮らし。(プランナー、がんサバイバー)
- 好きな事を好きと言える、嫌な事を嫌と言える、したいと思う事をする事ができる、したくない事をしないでいられる身体的、精神的状態。(高橋怜奈、医師・プロボクサー)
- 健康とは、健康に気をつける必要のない状態だと思ってます。(ルーク・商社マン)
- 「力」が貯蓄されている状態。つまり、体や心にダメージを受けたとき、後遺症なくダメージ前の状態に復帰できるだけの体力や気力が貯まっている状態。(スージー・広告会社)
- 自分らしく生きるための土台、積極的に生きるための資源、それが健康。健康は当事者視点の言葉であり、捉え方も十人十色。(秋山美紀、大学教授、がんサバイバー)
- 心理と身体に医学的な問題が見られない状態かつ自身がそれを受け入れ納得していること。(藤本修平、理学療法士)
- 思い立った時に人類の祖先(=魚)と対話しに釣りに出たり、この世の足跡(=地球)と対話しに山岳地帯へ逃げたりする身勝手な自分を大好きな状態のこと。(クリエーティブディレクター、CFO=Chief Fishing Officer)
- 人生において、やりたいことが、やれている状態にあること。 身体的にも、精神的にも、行動の自由が制限されていないこと。(クリエーティブディレクター、サラリーマンクリエーター)
- 建設的に先のことを考え、実行に移そうとする意欲があること。周りに対して感謝の気持ちを持ち、表現できること。(インスタグラマー、東京辺境グルメ部顧問)
- 自分が幸せになれるように自らの意思で行動でき、同時に他のだれかの幸せに思いをめぐらすことができる状態。 (今村茜、新聞記者)
- しっかりと呼吸をし、食べ、30分以上は無理なく歩け、縄跳び前回し50回飛び、プランク30秒以上はできる身体を持つ人。自分の身体の変化に敏感である事。(Satoko.K ミシガン在住 新体操・ヨガ指導者)
- 家族や周囲の人とのつながりのなかで『自分はこれから様々なトラブルがあったとしても、対応して生きていける』という安心感を持てていること。 (市川衛 医療の『翻訳家』)
- いつも通り起きて、いつも通り労働して、いつも通り大好きな人や物に会いにいくことができる状態(ウェブメディア編集者)
- 色々あっても自分が『幸せだな』と思える状態(公認会計士)
- 体の健康だけでなく、精神的な健康も含め、楽しく幸せに生きていられること。(大手企業、労組委員長)
- 自然に眠いと感じて、気持ちよく眠りにつけること。明日が来ることに不安になる夜を過ごしても、目覚めて食べた食事を美味しくいただけること。(NPO代表)
- 自分の名前の一部。親が一番願うこと。心身が丈夫で元気、病や苦がない。体の機能に不都合がなく、心も健全で思い通りに、安らかに、生活ができる。(健一郎40代・会社員。プランニング・ディレクター、マネジャー)
- 自分の本音にうそをつかず、楽しく幸せに生きられていること。反対に言えば、他人の意に沿おうと無理をして、不平不満を抱き、他人に感謝できなくなっていることが不健康のバロメーター。(研究者・公衆衛生学)
- 健康とは、心身の状態に関わらず生きることが辛くなく、安心して生活ができる状態のこと。(井村春樹・感染症専門医)
- 健康とは、「“健康である”ってどういうことだろう」「今、自分は健康じゃない(かもしれない)」ということを意識せずにいられる状態。(編集者)
- 心身ともに、良好な状態のこと。(40歳女性独身)
- 心や体に問題がなく余裕のある状態。身体的な病は避けられないかもしれないが、心の健康、健やかさは保ち続けることができるかもしれない。(医療情報担当 中山寛子)
- 自分にとって健康とは「それぞれが自分らしく入れる状態」です!(森田佳祐・理学療法士)
- 健康とは体や心の不安を気にすることなく、家族や友人と笑って日々を過ごせる状態。(岡田浩、薬剤師)
- 僕にとっての健康は、繋がる人同士が理解しあい尊重し支え合っている環境があること。(タカハシケンジ、恵比寿新聞編集長)
- 健康とは「日々の生活を、そして未来の暮らしに対して、”前向き”に向き合えているかどうか」(戒田信賢、コミュニケーションデザイナー・健康情報研究者)
いかがでしたでしょうか??
特にコメントをするつもりはありません。ただ、健康というものが「私たちが目指すもの」である以上
そして健康というものをデザインしていくことをしていきたいと考えている以上、その意味についてちゃんと考えて、共有していけたら嬉しいです。