日本発信の医学論文を増やしたい! 〜翻訳者の英文ライティングのツボ〜 はじめまして!小
“医療の翻訳家”市川衛が大切にしているコト 〜
「つたえる」のプロが教えるコミュニケーションのコツ
「伝えたいことが、伝わらない…」と悩むこと、ありますよね。
例えば、
「必要な情報はちゃんとお話しているつもりなんだけど、いまいち理解してもらえない」。頑張って自分なりに伝えているつもりなのに、なかなか結果が出ないと、相手のせいにしたくなることさえ、あったりするのが人間というものです。
では、質問です
「つたえるコツ」って、なんだと思いますか?
正解は、こちらです
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正解は〜、メディカルジャーナリズム勉強会主宰 市川衛さん のお話!
というわけで、今回は「医療の翻訳家」として活躍される市川さんの勉強会への参加報告をさせていただければと思います。
5月末の水曜日、渋谷のヒカリエの中にある素敵なイベントスペースで開催された市川さんのボランティア企画(参加費無料)。
タイトルは「“正しさ”と“わかりやすさ”をいかに両立するか〜入門編」。
悪い記事・文章に見られる問題点
今回の勉強会、まず“あまりお上手とは言えない原稿”と“編集のプロがリライトした原稿”の読み比べから始まります。
テーマは、 一般生活者向けの「とある疾患に関する病気の説明書」的な原稿。
市川さんは丁寧に、セミナーの参加者のみんなに、「この原稿を読んで感じたこと」を聞いていきます。
参加者の方からはこうした感想がいっぱい出てきました。
いかがでしょう。
みなさんが日々書いている資料や原稿、思い当たる節がある点もひょっとしたらあるかもしれません。真面目に一生懸命書いていたとしても、読み手の立場になると、文章というのは全く期待とは異なる評価を得てしまうことがあります。
文章を書くのはとても難しいですよね。。。
この“わかりづらい原稿”をみんなで読み、その原稿の問題点をみんなで議論した後に市川さんは「わかりづらい文章に共通するコト」として、以下の問題を指摘します。
「“誰に読んでほしいのか?”がそもそも明確に意識・設定されていない」
「読んでくれた人に、それを読むことでどうなって欲しいのか?が描けていない」
「読んでほしい人の顔や、その文章を読んでいるシーンをイメージできていない」
なるほど。かくいう筆者も、いわゆる【専門家】から発信される「健康情報」に触れたとき、『この情報は誰のための情報なのだろう?』と半ば苛立ちすら感じることがあります。
情報やファクトの羅列、健康情報に対する理解不足によって不安感が募る読者に寄り添わない情報の一方的な整理。優しくない情報はみなさんが感じているより、とてもいっぱい世の中に流通しているのかもしれません。
市川さんの指摘の通り、こうしたわかりづらい文章の多くは、本来読んでほしいはずの“読者”の思いや状況を十分に“想像”できていないことに起因するのかもしれません。
文章を書くときの「基本のキ」
わかりにくい文章の特徴のお話を踏まえて、市川さんが文章を書くときのコツをまとめてくれました。
読者の顔がイメージできていますか?読んでほしいその人たちに思いを巡らせることができていますか?市川さんは、私たちに問うように、この姿勢の重要性をお話ししてくれました。とてもシンプルです。でもひょっとしたらとても難しいことなのかもしれません。
この「基本のキ」を意識しながら、“編集のプロがリライトした原稿”を簡単に読んでみると、その差は歴然。編集者というコミュニケーションのプロが編集した原稿のポイントはいくつもありましたが、医療者が書いた原稿と比べたときに、以下の3つ、大きな違いを学ぶことができたわけです。
自分ではできているつもりになっているかもしれないけれども、読者の方に「どうなってほしいか」をしっかり意識しながら文章を作るだけで、私たちの作る文章の質を大きく変えることができる!のだと強く感じさせてもらうことができました。
私たちのように「メディア系」の仕事をしているわけではない多くの人間にとっては、「難しいから」と言って文章をつくるような活動を避けてしまったり、「文章をつくるプロじゃないから、しょうがない」とついつい後ろ向きに考えてしまうことが多いわけです。
ですが、市川さんのおっしゃるこの「基本のキ」をしっかりと意識するだけで、我々のコミュニケーションの質は大きく変わるのだ!と大きな勇気をもらうことができました。
「先を読みたい!」と思ってもらう
この「基本のキ」を前提に、さらに市川さんはプロならではのポイントをお話ししてくれました。
「どんな文章であれ、伝えたいメッセージをストーリーとして伝えていくために
“『その先を読みたい』気持ちをつくる”ことがとても重要なんです。
冒頭で、つまらない、わからない、と、読者の方々は絶対に前に進んでくれない。
最初の入り方で「その先を知りたい」と思わせられるかが、
コミュニケーションにおいてはとても重要なことなんです。」
そんな入り口をしっかりと作りながら、
読者に思いをめぐらせ、
決して“上から目線”を感じさせない言葉を選び、
読んでほしい読者が「知りたいと思っていること」にしっかりと応えることができる
情報と言葉選びをすることがとても重要なんです。
とてもシンプルですが、難しいことですよね。
我々も、普通の生活の中で無意識的に情報を選別しているわけです。
【情報消費者】として私たちが常にやっていることが理解できれば、我々自身が【情報発信者】になったときに、どのようなことを気をつけなければならないか?を考えることは難しくないかもしれません。ですが、なかなか難しそうです。。
市川さんは、誰でもその技術を身につけることはできる!と言います。
「とにかく書く。フィードバックをもらいながら、レベルを上げていく」。
私たちも、健康実務家も、この努力を続ければ、市川さんのような文章を書けるようになるのかもしれません!
受講者の方々からも、コツの話がいっぱい出てきます。
2時間のセミナーの中で、ここには書ききれないほどのいろんなコツのお話をしてくださいました。
市川さんが最後におっしゃっていた印象的なメッセージ。それは
「コミュニケーションは、薬や手術と、もしかすると同じくらいに
誰かを幸せにすることができるかもしれない」
「つたえる」ということに工夫を凝らすことで、お金をかけずに、私たちはもっと多くの健康を生み出すことができるのかもしれません。
「つたえる」ということに関心を持っていただいた読者の皆さん。
ぜひ、市川さんの技を学びながら、日々の取り組みに活かしていただければ嬉しいです。
市川さん!貴重なお話をありがとうございました!!
一般社団法人メディカルジャーナリズム勉強会:https://medicaljournalism.jp
市川さんtwitter :@mam1kawa