【連載Ⅱ】サードパス#002 「医療/健康問題を自分ゴト化する」というコト

【連載コラム】サードパス#002
#ロールプレイング #自分ゴト化

一般の人に “医療の課題” を、

自分のコトとして考えてもらうためには?

 


 

 

一般生活者の方に関心を持ってもらいにくい医療の課題を、
「自分ゴト」と感じて議論に参加してもらうには、どうすればいいのか?

 

こんにちは!サードパスの大屋です!

 

地域住民を巻き込んだ活動を進めていきたいと考えている医療従事者や行政の皆さんにとって、
一番悩ましいところなのではないでしょうか。

 

第2回目の今回は、一般社団法人サードパス主催の学びの場「irori(いろり)」で行われた

なかなか自分ゴト化しにくい専門的な話題を、生活に直結した身近な話題と感じてもらえるようになるをテーマとした「ロールプレイング」ワークショップの様子をご紹介したいと思います。

 


 

「医療崩壊」
―言葉は聞いたことがあるけど、どこか他人ゴト?

 

「医師不足や病院経営の悪化によって、地域で十分な医療を受けられなくなる」

 

そんな「医療崩壊」の危機が度々メディアなどで取り上げられています。

でも、一般の人にとっては、病院に今かかっているところでもない限り、
どこか他人ゴトのように感じてしまいがち。

とはいえ、税金で賄われる部分も多い医療の問題は、
本当は地域全体で話し合っていかないといけない問題です。

 

「irori(いろり)」では、「基礎から学ぶ医療政策の裏側」と題して、
様々な地域で病院経営再建に関わってこられた伊関友伸さんをゲストにお招きし、
地域医療を取り巻く制度や環境の実際を理解するためのワークショップを実施しました。

 


 

まずは、ミニレクチャーで、

◆高齢化の現状(高齢者人口がどんどん増加!)、
◆医療資源の状況(患者の増加に対して医療従事者のマンパワーが不足!)
◆社会保障費の推移(増加の一途!)   などなど、

医療を取り巻く厳しい状況を、数字で改めておさらい。
むむー、なかなか厳しい状況にあることは、なんとなく見えてきました。

それでも、今のところ医療費も介護費も保険が出るし、
行政がうまく考えてやってくれるんじゃない?と、いう表情の参加者たち。

ところが、次のワークに取り組んでみると、それが一気にみんなの身近な課題に感じられるようになりました。

 

おらが町の町立病院、
立場を変えるといろんなことが見えてきた!

ここで実施したのが「ロールプレイング」のワークです。

実際にある場面を想定して、複数の人が与えられた役を演じてみるというもの。

今回は、「架空の町立病院の経営を、様々なステークホルダーの役になって議論する」という設定で行いました。

 

具体的な進め方は、以下のような形です。

①前提状況・情報の共有

まず、この架空の病院を取り巻く状況をまとめた経営データが、参加者に配られます。

ここには、「病床数」「立地」「周辺医療機関」「町の人口」「医療従事者数の推移」「患者の内訳」「病院と自治体の財務状況」などの具体的なグラフや説明資料が含まれており、
まずはそちらに目を通して、病院の現状を理解します。

 

②役割分担「演じる立場」の設定

次に、参加メンバーにそれぞれの役割を設定。

今回は1グループ5名で、以下の役割分担と価値観を割り振りました。

• 院長Aー「できればこのままの経営形態でいきたい
• 町財政課長Bー町の財政のことを考えれば、病院の経営から手を引きたい
• 議員Cー町の財政第一で、町は病院経営から手を引くべきと考えている
• 住民Dー絶対に現状維持してほしい。お金のことは考えない
• 住民Eー現実的に物事を考え、このままでは医療は存続できないと考える

 

③ロールプレイング前半

ここから、ロールプレイングの演技がスタート。

みんな、自分に与えられた役の設定にもとづいて、主張を補強するようなデータを資料から探しながら、病院経営をどうするかを語ります。

・院長A「この病院が無くなってしまうと、困る患者さんがたくさんいるんですよ」
・議員C「そうはいっても、今の財政状況では存続自体が危ない状況だ」
・住民E「隣の市にも病院がありますから、そちらとうまく連携できないのですか」

などなど、対立する主張の中、落としどころを探っていきました。

 

④ロールプレイング後半

議論が煮詰まってきたところで、今度は同じメンバーで役割をスイッチ。

先程とは違う立場から、再度議論を始めました。
複数の視点を体験すると、それぞれの主張に理由と根拠があるということが分かり、
一筋縄では回答のでない問題だということもよく理解できました。

また、住民参加の議論を体験してみたことで、その必要性も実感でき、ここで一気に問題が「自分ゴト」になったという感覚がありました。

ワークでは架空の病院のお話でしたが、自分の近隣病院や、実家の両親のかかっている病院だったら…やはり無関心でいてはいけない問題なんです。
その重要性がなかなか実感されにくいというのが、やはり課題なんだなと感じました。

 

 

伝え方の工夫」、「場の工夫」が、共感に繋がる

今回の勉強会全体を通して、前半レクチャーの段階では頭で「理解」はできたものの、
どこかニュースを見ているような感覚で、自分の生活と結びつけて考えるところまでは至っていなかったような気がします。

後半の「ロールプレイング」ワークを通して、その問題に関わっている「人」が「自分」であると仮定してみることで、
「実際にそうなったら?」というところまで想像・実感をすることでき、地域医療の課題を自分ゴトとして捉えられるようになりました。

 

このように、制度や財政といった複雑な課題でも、
ロールプレイングのような仕掛けを通じて、「伝え方」や「場」に工夫することで、
一気に伝わりやすくなったという今回の事例は、他の様々な課題にも応用できることなのではと思います。

 

特に地域の課題を解決していく上で、住民の方の共感を得て進めていくことは、とても大切なポイントになります。
ぜひ、皆さんのフィールドでも、いろいろな工夫を実践してみてください!

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さて、一般社団法人サードパスでは【irori(いろり)】という多職種の医療関係者向けの“学びの場”を企画・実施しています。
この健康design studioでも連載を進めていきますが、ぜひホームページへのお立ち寄りいただけると嬉しいです。

一般社団法人サードパス http://3rdpath.org/

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