【連載 Ⅰ 】”企画”するということ#007

【連載】「企画する」ということ #007

「企てる醍醐味」Vol.4

 〜人は楽しい方の行動をとる~

 

三行で言うと?

  ① 「アクション・ファースト」という考え方
  ② “つい”行動してしまうツボがある
  ③「期待と報酬の連鎖」で“習慣化”に誘う

 


 

皆さん、おはようございます。プランニングディレクターのK一郎です!

いよいよ私が担当する「企画」も最終回です。

さて、前回お話しした「ファネル」の話は覚えていますか?

伝統的な行動モデルである、認知→理解→興味・関心→検討→…と、
行動に至らせる道筋を漏斗(ろうと)にたとえたものが「ファネル」ですが、

各プロセスの歩留まりをできるだけ高めることが、行動する人の総和を増やすという考え方です。

さらに、例えば「検討」が最終的な「行動」に誘うために最も重要だとした場合に、
その「検討」の質を高める施策(企て)を中心に検討するべきですよね。

そうした場合、施策上の「KPI」は、“検索件数”等の数値になります。

一方、
これとは異なり、いわばこの「ファネルをひっくり返す」ようなアプロ―チ方法もあります。

つまり、理解とか関心あるいは検討をすっ飛ばして、「行動させちゃおう!」というアプローチ。

以前、行動経済学に触れた回でも話しましたが、要は人間ってそんなに合理的じゃない、という話です。

昨今の「効率重視」「KPIによる進捗管理」といった効率論でがんじがらめな世の中の潮流が、
この新しいアプローチが有効に働く背景になっているような気もします。

 


「アクション・ファースト」という考え方

 

いきなり行動させるってどういうこと!?

 

理屈をクドクド話すよりも、先にチャートを見ていただきましょう。

 

 

いきなり行動させるってどういうこと!?と思われるかもしれません。

こちらも先に事例をご覧いただくとご理解いただけるはずです。

 

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Volkswagen が行った「Speed Camera Lottery」
(スピードカメラ宝くじ)

 

先達がその解決に苦労を重ねてきた社会課題の一つ「制限速度の順守」を成功させたのですが、仕掛けはいったてシンプル。

道路脇にスピードメーターを設置し、そこを通り過ぎる時に、表示されているスピードぴったりの速度を走れたら賞金がもらえるというものです。

先述の通り成果も上々で、21.6%のスピード低下(時速にして平均6.8km/h低下)をもたらしました。

この企ての根っこにあるのが、Volkswagenが掲げる「Fun Theory」です。
即ち「人は、楽しいことを指向する、楽しい方を選択する」という行動原理をテーマとしています。

スピード違反を罰するのと全く逆の、スピードを緩めたらご褒美がもらえ、
しかもギャンブル的な楽しみもあるとくれば、行動が変化したのです。

 

「アクション・ファースト」なアプローチでは、
ターゲットにWhyではなく、Howを考えさせることにあります。

順目のファネルとは全く逆のアプローチですよね。

 

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「hope soap」

 

続いてもう一つ。事例は10年以上前のものですが、
個人的には、行動喚起のための殿堂入りの事例だと思っています。

WHOが南アフリカで手掛けたものです。

ケープタウンの貧民街は衛生環境が劣悪なため、毎年数千人もの人々がチフス、下痢、肺炎、コレラなどの感染症で亡くなっていました。
中でも子供たちの死亡率が高く、衛生状態の改善が急務となっていました。
子供たちの命を奪う感染症の多くは、実のところ“頻繁に石鹸で手を洗うこと”によりかなりの割合で防げるといいます。

そこでWHOは、子供たち一人一人に、石鹸を確実に、しかも頻繁に使ってもらえるようにと、
「Hope Soap」という特別な石鹸を作りました。「Hope Soap」の中には、子供たちに魅力的なオモチャが埋め込まれていたのです。

オモチャが欲しい子供たちは、石鹸を使いきるために一生懸命に石鹸で手を洗うという仕組みです。さらには手だけでなく、顔や体も頻繁に石鹸で洗うようになったといいます。結果、貧民街で発症する感染症は、なんと70%も減少しました。

 

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「Cool Biz」

 

最後にもう一つ、「Cool Biz」も「アクション・ファースト」な事例です。

「温暖化ガス排出削減」という大義のために、
「ネクタイをはずす」というダイレクトな行動誘発をしました。

結果、当初はなかなか結果が伴わなかったエアコンの温度設定も、企業ぐるみで温度が統一され、同時に、社員のエコ意識の覚醒と浸透がはかられました。

 

 


“つい”行動してしまうツボがある

 

「アクション・ファースト」なアプローチを可能にする切り口は、実証的な成果からの逆引きですが、いくつか定型化されています。

言うならばノウハウとしての「行動を起こすツボ集」。

こちらも事例と共にご紹介します。

 

-「郷土愛を刺激する」

営業員や接客の方が「○○出身」という名札をつけているのを最近よく見かけませんか?

同郷の出身というだけで、心理的な距離がグッと縮まり、つい胸襟が開いてしまいます。

とある自動車ディーラーにおいては、
高校の同窓というのが営業成績を上げるキーファクターとのことです。

 

-「対比・対決する」

「あなたはどっち派?」といった企画に、つい反応してしまいませんか。

ハンバーガーチェーン店や定番スナック菓子の対比型フレーバーの人気投票企画には、
ファンならずとも商品体験者であれば参加したくなりますよね。

 

-「あの人が/あの人も使っている」

特に知覚品質や機能の違いを感じにくい商品・サービスでよく用いられています。
目利きとなる著名人が推薦するなら間違いない、みんなが使っているなら安心だ、
というお墨つき感も、失敗したくない心理を軽減します。

 

-「カテゴリーNo.1」

一番売れている商品であれば失敗しないという安心感も、上記と同様ですね。

特に競争の激しいビール類で良く見かけるようになりました。

みなさんも、テレビCMや店頭販促物を注意して見てみてください。

 

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「行動を起こすツボ」は、大きく2種類に分類できます。

先に挙げた2つは、人間の欲求のアクセルを踏み込むことに作用し、

後にあげた2つは、失敗したくない・損をしたくないというブレーキを緩めることに作用します。

人間のどちら側の本能を刺激するか、ということですね。

 


「期待と報酬の連鎖」で“習慣化”に誘う

 

最期に、「習慣化」についてお話しします。

様々な障壁を乗り越え、せっかく理想の行動をとってもらったものの、
それが継続され習慣化されなければ、真の目標達成には至りません。

折しも、新しい年が明けたタイミングで、新年の目標を掲げた方もいらっしゃると思いますが、
どうすれば習慣として定着しやすいでしょうか。

 

こたえは、脳へのご褒美=報酬にあります。

さらに一歩踏み込むと、脳が「報酬への期待値」を感じるシグナルを認識することです。

私は週末のランニングを習慣にして15年以上経ちます。
何をやっても3日坊主の私が、苦行ともいえるランニングを続けられているかと自分に問えば、
表面的には「走破後の爽快感」ですが、少し深く自己分析をしてみると、次の通りではないかと思います。

発汗していること、体が軽くなった感じ、10㎞を走り切っている達成感による「心地よい疲労による健康維持行動をしている感」だと思います。
(本当はもう一つ、ダイエットしてモテるためですが、こちらの報酬は得られておりません(笑))。

 

つまり、直接的な爽快感以上に、この適度な疲労感がシグナルとなり、脳に対して喜びの指令を出しているということです。その実、

 

実際に診断結果等の数値で健康が証明されているわけではありませんし、
それがモチベーションの維持に繋がってはいません。

 

専門家の分析によれば、きっかけと報酬そのものは新しい習慣を長続きさせる力はなく、
「脳が報酬を期待するようになってはじめて」
(興奮や達成感を求めるようになってはじめて)習慣化するそうです。

「期待と報酬の連鎖」をつくりだす…言うは易し、でしょうか⁉

 


 

さて、これで私のお話も終わりです。

 

健康実務家のみなさんの日々の仕事のヒントになり、
健康を自覚する方が一人でも多く増えてくれれば望外の喜びです。

 

全4回の「企画」のよもやま話、お付き合いいただき本当にありがとうございました!

 

 

 

 

 

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