“歩きたくなる” をデザインする。#事例紹介 #001

最近、「歩く」ブームですよね。

歩数計アプリを使って、1万歩歩こう!みたいな記事や広告を見ることがよくあるわけです。

企業の商品キャンペーンだけでなく、企業が自社従業員向けに「健康経営」というキーワードの中で行われる取り組みも増えてきました。

今回のコラムでは、「健康のために歩いてもらう」という

簡単そうでなかなかできない、健康行動デザインの事例を紹介させてください。

面白い動画

まずはこの動画を見てもらえればと思います。

ぼくはこの動画が大好きで、大学での授業などお話をさせてもらうときにかならず
アイスブレークで使わせていただいています。

さてみなさん質問です。

「この動画は何を目的に作られていると思いますか?」
 ↓
 ↓
 ↓
動画を見る限りですと、
 「歩かない沖縄」
 「長寿県からも陥落」
 「たまには歩け、うちのあーんちゅ(合ってますか?)」
 「クーポンもらえる歩数計アプリ 歩くーぽん」
 「RBCおきなわ健康長寿プロジェクト」 と言っていますね。

この情報から、おそらくこのような想定をすることができるのではないでしょうか。

健康テーマ :健康寿命の延伸?運動に関連する生活習慣病予防?
ターゲット :沖縄県民
伝えたいこと:「沖縄の健康が危ない」「歩数計アプリを使って歩いて!」
方法    :コメディタッチの動画で視聴者の「関心」を引きたい

なるほど。

この動画を見た多くの方(【受け手】である生活者一般)は

「おもしろいねぇ」「沖縄人は歩かないんダァ」「こんな歩数計アプリがあるんだぁ」ということを感じるわけです。

楽しい動画を駆使して、「関心」をもってもらうことには成功したのではないでしょうか。

でも、僕みたいな懐疑的な人間は、動画をつくった人が期待する歩くという「行動」にはなかなか行き着かないのでは?と感じます。

【作り手】【伝え手】の方々のゴールは、【受け手】であるターゲットに

 「楽しい動画だね♫」とおもってもらうことはもちろんのこと、
 「“歩く”という行動」を取ってほしいわけです。

 

「にんじん」を使って、沖縄県民を健康に誘う!

その期待する「行動」に視聴者を誘うために、この動画にはどんな工夫が仕掛けられているのでしょうか。

次の動画を見ていただければと思います。
(解説動画)

なるほど。

この動画にはこのような「企だて」があったのですね。
「①実態」「②ゴール」および「③④ギャップ(原因)とアプローチ(企画)」をシンプルに整理をすると、
下記のような感じでしょうか??

課題を明確に設定し、ゴールを描いた上で、

ターゲットである沖縄県民に、その全体像(課題とゴール)を理解してもらい、
そのゴールを実現するためのアプローチ(ギャップ)を理解・行動してもらう。

情報の【受け手】である生活者目線で見てみると、どうでしょう。

 「関心」については比較的得やすいのではないかと思います。
 だって、視聴者は一般生活者。太ってきたなぁ、とか、最近飲みすぎだなぁ、とか
 ちょっとした健康不安は日々の生活の中で感じているわけですから。

でも、もう一歩深く生活者の価値観を見てみると、「わかっちゃいるけど、ねぇ。。」ということが往々にしてあるわけで。

つまりは、「行動」に移すというのが、僕のような弱い人間には、とてもハードルが高いんですよね。

そこでこのプロジェクトでは、この「理解」から「行動」へ、という高いハードルを越えるための仕掛けが企てられているわけです。

御察しの通り、それは「ニンジン」です。

アプリを使って歩数を測定し、その歩数に応じてインセンティブが得られる!
というところに「ターゲットが行動したくなる仕掛け」が組み込まれています。

コーヒーがタダでもらえる、というニンジンが設計され、
(極論健康のために運動をするというわけではなくても、)
コーヒーが欲しいあまりに、結果として歩くという行動をとってしまう。

この仕掛けこそが、この健康プロジェクトにおける「デザイン」の本質である!と感じました。

 

因数分解すると、全体像が見えてくる

こうした企画、
「なぜあの人の企画は、結果が出せたのか?」

「なぜ私の企画は、なかなか結果が出ないのか?」としっかり向き合っているのだと思います。

いい事例を見るとき、あるいは自分自身の取り組みを見直してみるとき、
その取り組みの全体像をフレームとして分析して見て、
何が必要かをもう一度考え直すことをお勧めします。ぜひ、このフォーマットも使って見てください。

ダウンロード:PDFファイル

 

最後に

琉球放送によって行われているこのプロジェクト。
放送局と広告代理店により企画され、さまざまなプレイヤーがそれぞれの強みを使った仕掛けづくりができています。
ぜひ一度、下記のURLをご覧になって見てください。

※本記事は、HP等の開示情報を閲覧し執筆者が独自に考察したものです。

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