日本発信の医学論文を増やしたい! 〜翻訳者の英文ライティングのツボ〜 はじめまして!小
【連載コラム】サードパス#004
#ワークショップ #キーワード
医療の未来をデザインするフューチャーセッション
今の状況をなんとかしたいけれど、
どこから手をつけたらいいのかわからない…。
世の中には、単純な正解のない、複雑な問題がたくさんあります。
そのような問題にどう向き合っていくのか。
手がかりがないとき、
もしかしたらヒントを見つけられるかもしれない方法の一つが「フューチャーセッション」です。
こんにちは!サードパスの大屋です!
第4回目の今回は、この「フューチャーセッション」をテーマに話題を提供させていただきます。
サードパスは2013年の末、「多職種の医療関係者を繋ぎ、知見の共有を促すことで、医療をより良いものにしていきたい!」というメンバーの思いで立ち上がった団体です。
ところが、立ち上がったは良いものの、じゃあ具体的に何をしていこうか…というところは手探りのままでした。
いろいろなやりたいことのアイディアは出てくるのですが、それが本当に現場で必要とされているものなのか、問題の解決に繋がるのか、確信が持てないまま、やれることをやってみるという状態。
迷っていた2014年、「じゃあ一度、現場の医療従事者の声を聞きながら、アイディア出しをしてみようじゃないか」ということで実施したのが、この「医療の未来をデザインするフューチャーセッション」でした。
サードパスでは、このときのセッションをプロトタイプに、2015年から対話型ワークショップの「irori(いろり)」定期開催をスタートすることになりました。
2020年になった今でも、まだまだ手探りで活動しているところは変わっていませんが、立ち上げ早期のこの時期にフューチャーセッションを行ったことで、サードパスとして目指したい方向性と課題がぐっと明確になったように思います。
現場の課題に悩んでいる方や、これから何か新しい取り組みをしてみたいという方などには、とても役立つ手法と思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
参考書籍:「フューチャーセンターをつくろう」野村恭彦(プレジデント社)
フューチャーセッションとは何か?
「フューチャーセッション」とは、
「最適解のない複雑な問題を解決するために、企業・行政・NPOなどのセクターの壁、組織内の部署の壁、専門分野の壁など、立場の違いを超えた対話により、協調アクションを生み出す場」と説明されています。
「フューチャー」という言葉が示すように、その大きな特徴は「未来思考」というところ。
現状の延長から発想するのではなく、
ありたい未来がどうしたら実現するのかを、バックキャスティングで考えていくというのが原則です。
「2016年 ものづくり白書」(経済産業省)より
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2016/html/honnbunn/104011.html
また、フューチャーセッションには以下のような特徴があります。
- 既存の問題設定とは異なる、フレッシュで良質な「問い」の設定から始めること
- 新たな「問い」に応じた、未来のステークホルダーを選び(キュレーション)、招き入れること
- 創造的な対話を通して、未来に向けての「新たな関係性」と「新たなアイデア」を生み出すこと
- 対話だけで終わることなく、ステークホルダー同士が協力して行動できる状況やアクションプランを生み出すこと
サードパスでも、この考え方・特徴を踏まえた場になるよう、企画を行っていきました。具体的にどのような“場”を設定したのか、次にご紹介していきます。
「医療の未来」を一緒に考えたい人を募集!
サードパスでは、まず参加者を募集するにあたって、医療学生・若手医療者がつくるWEBマガジン「M−Labo」との共同企画勉強会という形をとりました。
フューチャーセッション実施にあたって重要なポイントである「参加者の多様性」を確保するために、サードパス以外のネットワークからも参加してもらいたいという狙いと、M−Labo読者の医療学生・若手医療者は、未来の医療における重要なステークホルダーになるだろうと考えてのことでした。こちらの狙い通り、M−Laboからの声かけによって、サードパスのことをそれまで知らなかった若手医療者にも参加いただき、新鮮な視点で活動への意見をいただけました。その他にも、フューチャーセッションの開催情報をまとめているWebサイトに案内を掲載し、フューチャーセッションに興味がある一般の方にも参加いただけるようにしました。
募集の仕方次第で、集まる人の背景や関心事もずいぶん変わってきます。こちらが期待するような“場”にするために、誰に・どのように声をかけて参加してもらうかというのも、しっかり考えて設計していくことが大切です。
ちなみに、実際に掲載した案内文はこんな感じでした。
セッションの目的
・医療の未来のあり方について、様々な立場の人と一緒に考える
・フューチャーセッションを体験し、対話のための「より良い場作り」について学ぶ
対象者
・医療関係の仕事に従事する方
・医療系学生
説明
これからの医療には、何が必要なのでしょうか?
最適解のない複雑な問題を解決するために、立場の違いを超えた対話により協調アクションを生み出す場「フューチャーセッション」の手法について学びながら、医療の未来を一緒に考えてみませんか。
アジェンダ:
1.オープニング
2.レクチャー:フューチャーセッションとは何か
3.問題提起:サードパスの考える医療の課題
4.フューチャーセッション(実践ワークショップ)
5.振り返り&学びのシェア
フューチャーセッションをやってみた
そしてフューチャーセッション当日。
サードパスメンバーがファシリテーターを務め、2グループに分かれてグループワークを行っていきました。
最初にウォーミングアップとして実施したのが、「100万円あったら何に使うか?」を各グループで話し合って決めるというもの。
このお題をまずは3分間、グループ内で自由に話し合ってみました。このときは特に話し合いのルールは決めず、全員で雑談のような形で進めました。
最初の3分の話し合いの後、今度は同じテーマについて、以下のようなルールを設定した上で、同じく3分間の話し合いをしました。
・最初の2分で、できるだけたくさんの案を出すこと(20個目標)
・最後の1分で、全員で1つの案を決定すること
・ホワイトボードに書きながら話し合うこと
すると、最初の3分間ではなんとなく各自が思ったことを言っただけで終わっていたものが、2回目のグループワークではどのグループも3分で1つの結論まで到達することができました。
ここから、ディスカッションの生産性をあげるためには、いくつかのルールがあることがわかります。
- アイディアの発散と収束は同時に行わない…1つのプロセスに集中する
- 一人で考えない…一人では気付かない部分に気付くことができ、納得性も高まる
- 書きながら議論する…書かれたものを組み合わせたり俯瞰的に見たり、より高いレベルで思考ができるようになる
- シナリオに沿って進める…今やるべきことに意識を集中できる
これらを理解したところで、フューチャーセッションの本題に入っていきました。
設定した問いは、以下の3つ。
トピック1:理想とする未来の医療のあり方
トピック2:医療従事者間の連携や、医療界と企業との関係における、現在の課題
トピック3:一般社会に医療の課題を理解してもらうにはどうすればよいか
この“場”に集まってくれた人は皆さん、これらの課題に共感し、何かしたいという思いを持っている方ばかり。サードパスのメンバーもグループワークに一緒に参加し、今感じているような課題意識や活動案をぶつけて、対話を深めていきました。
対話をしながら、やはり重要だと感じたのが、
フューチャーセッションの原則である「未来思考」でした。
現状の課題は、皆さん身近で今感じていることだけに、いろいろと具体的な内容が出てくるのですが、じゃあそれをどう改善する?となると、なかなか簡単にはいかなさそう…という思いが先にたってしまいがち。
でもここで、視点を「現在」から「未来」へ一段あげて考えることで、こうだったらいいのになぁという「ワクワク感」が生まれ、より自由に理想の姿を描くことができます。
「あるべき未来の姿」をまずイメージすることができれば、「未来の姿と現状とのギャップ」=「解決すべき問題」として明確になります。
また、フューチャーセッションを通して、参加者が互いの価値観や目指したい姿を理解し合うことができるので、フューチャーセッションのような企画を行うこと自体が、課題に一緒に取り組む仲間作りの“場”としても、とても有効だと感じました。フューチャーセッションが、街づくりなどステークホルダーの多いパブリックセクターで多く活用されているというのも頷けます。
そして、「未来」をみんなで語るという体験は、実際やってみて、とてもワクワクする楽しいものでした。現状に閉塞感を感じているような人にこそ、体験してみていただきたいワークです。特別な道具や場所は必要なく、普通の会議室があれば気軽に実施できるものですので、興味を持たれた方はぜひフューチャーセッションやってみてくださいね!
一般社団法人サードパス http://3rdpath.org/
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さて、一般社団法人サードパスでは【irori(いろり)】という多職種の医療関係者向けの“学びの場”を企画・実施しています。
この健康design studioでも連載を進めていきますが、ぜひホームページへのお立ち寄りいただけると嬉しいです。
一般社団法人サードパス http://3rdpath.org/